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04.06.12

第5章 売上と利益の関係を考えよう<前編>

前回までのお話
一人前のチーズ職人として独立するチュー太。チーズの味がわかるねずみのために、天然素材100%でカロリーがあまり高くないチーズを作ることを決めます。チーズは最初に開封してから3日経ってしまうと固くなってしまうため、味よりも値段を重視するねずみが多いことを知り、1日分を1パックにし、何日か分をまとめて売ることにしました。次は店名や商品名、出店場所を考えますが、おチューさんからまずは商品の特徴がわかるキャッチフレーズが必要であることをアドバイスされます。他商品との差別化しなければ特徴が伝わらず、お客さんに買ってもらえないのです。
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第5章<前編>

チュー太はキャッチフレーズを考えるために、自分のお客さんのことを改めて具体的に考えてみました。チュー太のお客さんは、チーズの味が分かるねずみ、独身で若さを維持したいと思っているメスのねずみ、働いていてそこそこお金を持っているねずみ、固くなったチーズを捨てるのはもったいないねずみ、でも手間はかけたくないと思っているねずみ、これらの条件を全て満たすねずみです。そんなねずみは、あんまりたくさんいません。でも、だからこそ、いいのです。チュー太はもう、そんなことでは悩みません。

チュー太が悩んでいるのは、チュー太のチーズの特徴のどの部分をキャッチフレーズにすべきなのかということです。天然素材100%で低カロリー、味もおいしくて、値段はちょっと高いけど高級品よりは安い、しかも1日分ずつ袋に入っているから食べ残さないので固くならないし、毎日開封したての新鮮なチーズを食べられる、欠片を捨ててしまうこともないので経済的、2週間分まとめて買えるから買い物の手間も減る。こんなにたくさんの特徴があるのです。全部キャッチフレーズにしたら、とんでもなく長いキャッチフレーズになってしまいます。そんなキャッチフレーズじゃ、誰も覚えてくれないでしょう。それどころか、そもそも読んでくれないかもしれません。

チュー太は、自分のチーズの特徴の中で、一番の特徴は何かを考えることにしました。それは、他のお店のチーズにはない特徴です。色々と考えた結果、チュー太のチーズの一番の特徴は、「1日分ずつ袋に入っているから食べ残さないので固くならない」という特徴だということになりました。
でも、これだけでも、ちょっと長すぎます。しかも、さらに親切に説明しようとすると、「最後の最後まで捨てずに食べられるので、もったいなくない」という言葉も加わってしまいます。そんな長いキャッチフレーズは、聞いたことがありません。
なのでチュー太は、一番の特徴の中でも、特に重要な部分は何かと考えました。そしてチュー太は、それが「固くならない」ではないかと思いました。何しろ、ねずみなら誰でも、「チーズは固くなるもの」と思っているからです。「固くならないチーズ」と言われたら、誰だって「どんなチーズだろう?」と思うでしょう。さらに、「世界初! 固くならないチーズ」と言われたら、一度は食べてみたいと思うに違いありません。チュー太は、これをキャッチフレーズにすることにしました。

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次は、お店の名前と商品の名前です。チュー太は先に、商品の名前を考えることにしました。なぜならば、さっきのキャッチフレーズは、商品のキャッチフレーズだからです。だから、商品の名前の方が、先に考えやすいと思ったのです。
商品名については、一番の特徴のうちの「固くならない」以外の部分を表現するのが良さそうです。「固くならない」はキャッチフレーズで説明できますから、他の部分を商品名で伝えるのです。「固くならないチーズ」と言われたら、きっと「どうして?」と疑問に思うでしょう。だから、それに答える商品名がいいのではないかと、チュー太は思いました。つまり、「一日分ずつ袋に入っているから」ということになります。それに、「毎日新鮮」ということも、ぜひ伝えたいと思いました。だからチュー太は、<デイリーフレッシュパックチーズ>という商品名にしました。

あとは、お店の名前です。一番の特徴については、キャッチフレーズと商品名で、充分に伝わる気がします。だから、他の特徴を表現するため名前を、お店に付けるべきでしょう。これについては、なかなか決めることが出来ませんでした。でも、チュー太は、誰のためのお店なのかを伝えるべきだと考えました。だから、「働くメスねずみのためのチーズ屋さん」という、少し長い名前にしました。これなら、少し長くても覚えてもらえそうです。しかも、真面目なお店って感じがして、チュー太の性格にもピッタリです。

お店の場所も決まりました。オープンのための準備は、着々と進んでいます。チュー太は、より良い商品を作るために、何度も何度も試作品を作りました。その結果、自信を持って売ることができる商品を作れるようになりました。
そして、丁度その頃、お店も完成しました。遂にオープンの日がやってきたのです。チュー太は期待と不安で、とてもドキドキしていました。

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最初のお客さんは、おチューさんとその仲間たちでした。彼女たちは、ワーワーキャーキャーチューチュー言いながら試食品を食べて、その後ごっそり買って行ってくれました。でも、その後は、たまにしかお客さんは来ませんでした。初日ですから、仕方がありません。それに、むしろチュー太は、オープン初日から知り合いではないお客さんが少しでも来てくれたことに、とても満足していたのです。
それから徐々に、お客さんは増えていきました。<デイリーフレッシュパックチーズ>の味と便利さ、それにチュー太の真面目な接客ぶりがクチコミで広がって、お客さんが増えたのです。こうしてチュー太のお店は、少しずつですが順調に売上を伸ばしていきました。

chuta&greenmat.jpgさらに順調に売上を伸ばしていたのが、チュー輔のお店です。チュー輔のお店は、チュー輔自身が考えていたよりも、はるかに娘ねずみの心を捉えました。チュー輔のお店は、オープンしてから数日後には、たくさんの娘ねずみたちが押し寄せるようになっていたのです。

第5章 売上と利益の関係を考えよう<後編>へ続く
※2012年4月10日(火)公開!

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同じ時期に独立したチュー輔のお店は好調です。値上げやお店の拡張とお客さんをどんどん増やしていきます。宣伝広告にもお金をかけます。売上、固定費、変動費すべてが増えていきます。