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04.24.12

第7章 質問して提案する<後編>

chuta_pencil135_151.jpg前回までのお話
ねずみのチュー太は「働くねずみのためのチーズ屋さん」を開きました。お客さんは少ないですが、チュー太の真面目な接客とクチコミで徐々に増えていきました。しかし自分1匹が食べていくだけで精一杯です。これでは病気になったときにお店を閉めなくてはなりません。2匹でお店をやるには売上を倍にしなければなりません。お客さんを増やすためにはどうしたらいいのか思い浮かばないチュー太ですが、チーズを買いにきたおチューさんからアドバイスを受けることに。
第1章からご覧になる方はこちら

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第7章<後編>

「質問?」
「そう。相手のことについて、色々聞き出すのよ。先日お買い上げいただいたチーズの味はいかがでしたかとか、どんなチーズがお好きですかとか。アンタの店のチーズはちょっと高いから、それを買いに来るお客さんは、チーズ好きに決まってるでしょ? だから、チーズの話題だったら、喜んで答えてくれるわよ」
「そうすれば、お客さんが増えるんですか?」
「それだけじゃダメよ。まだ先があるの」
「はあ」

nezumi_blue_dot.gif「お客さんが自分のことについて色々話してくれれば、そのお客さんのことが色々分かるじゃない。そうしたら、そのお客さんに合わせた話題をするようにするのよ。そうなったら、そのお客さんと仲良くなれるでしょ?」
「なれるでしょうね。それで?」
「それでって、それで終わりだけど」
「それで終わり? えーと、それでお客さんが増えるんですか?」
「増えるわよ」

チュー太には何がなんだか分かりませんが、おチューさんは自信満々です。だからチュー太は、不思議な気持ちで質問しました。
「なんで、それでお客さんが増えるんですか? だって、今まで来てくれてるお客さんと仲良くなっても、そのお客さんがまた来てくれるだけで、全然お客さんが増えないじゃないですか」
「バカね。そうじゃないわよ。いい? まず、お客さんと仲良くなったら、そのお客さんは、もっとアンタの店に来るようになるわよ。そうなったら、お客さんが増えたのと同じことでしょ?」
「そうですけど、仲良くなったからって、もっと来るようになりますかね? 遊びに来るわけじゃないんだし」
「そうね。仲良くなっても、それまで通りのお客さんもいるでしょうね。けど、もっと来るようになるお客さんも絶対にいるわよ」
「そうなかぁ」
「そうよ。だって、アンタの店のお客さんが、いつもアンタの店だけでチーズを買ってるとは限らないでしょ? 他の店にも行ってるお客さんだって絶対にいるわよ」
「あ、そっか」

やっとチュー太にも、おチューさんの言いたいことが分かってきました。だからおチューさんは、得意になって説明を続けます。
「それに、仲良くなったら、自分の知り合いに、アンタの店をお勧めする回数だって増えるでしょうし、強くお勧めしてくれるようにもなる。そうなったら、お客さんが増えるでしょ」
「なるほどー」
「さらに言えば、お客さんの好みを聞き出したら、そのお客さんの好みに合わせたチーズの食べ方を教えてあげれば、すごく喜んで今までよりもたくさん買ってくれるようになるかもしれないし。それに、そのお客さんの好みに合ったチーズをわざわざ作ってあげたら、もっともっと喜んで、もっともっと買ってくれるでしょうし、自分の知り合いにももっともっとお勧めしてくれるんじゃない?」
「おぉ! そういうことかー!」
「そういうこと。分かった?」
「分かった、と思います、たぶん」

「心細いわねぇ。じゃあ復習するわよ。まずは質問して、お客さんの好みを確認する。確認したら、それに合わせたことを言ったり、したりしてあげる。つまり、提案ね」
「質問して、提案するってことですよね?」
「そうそう。ちゃんと分かっているじゃない」
「はい。おかげさまで」
「じゃあ、がんばってね。また来るわ。じゃあね」
「ありがとうございましたー!」

nezumi_blue_dot.gifチュー太はまたもや、おチューさんからたくさんのアドバイスをもらいました。おかげでどうやらチュー太にも、お客さんとのコミュニケーションの大切さが理解できたみたいです。ちょっと頼りない感じですが、きっとこれまでより少しはたくさんお客さんに話しかけることでしょう。もしかしたら、これでチュー太のお店も、お客さんが増えるかもしれません。

one_point1.JPGワンポイント・アドバイス

お客さんとのコミュニケーションは、あらゆるビジネスにおいて、最重要事項です。これがおろそかですと、どんなビジネスでも絶対にうまくいきません。なぜならば、そんなことでは、お客さんのニーズやウォンツが分からないからです。お客さんのニーズやウォンツは、お客さんの方から積極的に言ってくれるわけではありません。なぜならば、お客さん自身も、自分のニーズやウォンツを、ハッキリと分かっているわけではないからです。だから、こちらから質問して、聞き出す努力をする必要があるのです。

でも、質問するということは、意外に難しいものです。表面的な質問は簡単ですが、相手も自分で気づいていないことを聞き出すための質問ですから、とても難しいでしょう。そういうことをするためには、こちらで「ひょっとしたら、こうかもしれない」ということを考えて、それを質問する必要があります。例えばアンケートの質問や営業の時のお客さんとの会話も、同じように行う必要があります。決まりきったことを言っているだけ、思いついたことを言っているだけ、ということではダメなのです。

つまり、「仮説を立てて検証する」ということです。だから、ビジネスにおいては、仮説を立てることが非常に重要なのです。「こうかもしれないし、ああかもしれない」という可能性をたくさん考える必要があるのです。これは、恋人にプレゼントするものを考えるようなものです。相手のことをよく知っていないと、相手が喜ぶプレゼントを考え付くことは出来ません。だから、相手のことをよく知る必要があるのです。

モノが足りない時代は、作れば売れました。でも今は、モノが余っています。人口が減り始めましたから、もっと余るようになっていきます。だから、お客さんのニーズやウォンツを把握することの重要性が、どんどん高まっているのです。つまり、仮説を立てることの重要性が、どんどん高まっているということです。

第8章 お客さんとのコミュニケーションを増やせ<前編>へ続く ※2012年4月27日公開!

これまでチュー太が学んだこと
第1章 新しい事業・商品を作るときは、最初に「誰のためにビジネス」をするのか考える。
第2章 お客さんのこと、競合のことをよく知る。リサーチしないと戦略は立てられない。
第3章 ターゲットを絞り込み、ターゲットのためのサービス提供で顧客満足度を上げる。
第4章 良い商品でも特徴を伝えなければ売れない。キャッチコピーで差別化を図る。
第5章 売上と利益の関係を考える。やみくもに固定費、変動費を抑えればいいわけではない。
第6章 売上拡大にはペネトレーション戦略(広告などで一気に認知を広げる)とスキミング戦略
     (メディアを選択しゆっくりと認知を広げる)がある。特徴をよく理解し戦略を立てる。