TOP > 高橋朗のマーケティング小説「チュー太はどのようにチーズ屋さんを成功させたのか」 > 第13章 売上よりも利益率が重要<前編>



06.12.12

第13章 売上よりも利益率が重要<前編>

前回までのお話
チュー太は腕のいいチーズ職人です。自分のようにチーズの味がわかるねずみのために、「働くメスねずみのためのチーズ屋さん」と「ちょいワルねずみのためのチーズ屋さん」を経営しています。アルバイト店員のチュー子ちゃんとチュー哉がお客さんとのコミュニケーションを大切にした結果、お得意さんが増え、売上が伸びました。お得意さんのためのサービスとして、ポイントを貯めたお客さんには店頭で買えない最高級のチーズをプレゼントしたところ、是非店頭で売ってほしいとの声があがり、お祝い事やギフト用に完全予約制で「ちょいワルねずみのためのチーズ屋さん」での販売を始めました。
第1章からご覧になる方はこちら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第13章<前編>

チュー子ちゃんが考えた通り、お祝い事の時のご馳走やギフトとして、<D.D.プレミアム>は順調に売れました。だから、売上が増えました。しかも、それだけではありません。<D.D.プレミアム>は高級品なので、利益率がいいのです。そういう商品が売れているわけですから、安い商品がたくさん売れるよりも、効率よく利益が増えます。

そのためチュー太は、やっとアルバイト代を上げることが出来るようになりました。今日は、それをチュー子ちゃんとチュー哉に伝える日です。

「チュー子ちゃん、それにチュー哉、二匹ともこれまで本当によくがんばってくれたと思っている。どうもありがとう」
「どうしたんですか、急にあらたまって」
「そうっすよ。何かあったんっすか?」
「あったんだよ」
「えっ! まさか、また何かトラブルですか?」
「いやいや、そうじゃないよ。今度は嬉しいことがあったんだ」
「嬉しいこと?」
「うん」
「なんっすか?」
「あのね、遂に僕たちの店も、アルバイト代をアップすることが出来るくらいの利益が出るようになったんだよ」
「えぇー!」
「マジっすか!」

「マジだよ。今日の時給から100円アップだ」
「わーい! 別に時給を上げて欲しかったわけじゃないけど、上がったらやっぱり嬉しいですね」
「本当っすね。店長、ありがとうございます」
「お礼を言うのは僕の方だよ。君たち二匹のおかげで、利益が出るようになったんだからさ。チュー哉がポイント制を考えてくれて、チュー子ちゃんが<D.D.プレミアム>の完全予約制を考えてくれたから、利益が出るようになったんだよ。それと、君たち二匹が毎日よくがんばってくれたおかげだね」
「そう言っていただけると、よけいに嬉しいです」
「そうっすよね。やる気出ますよね」
「じゃあ、二匹ともこれからもバンバン働いてくれよな」
「はいっ!」

チュー子ちゃんとチュー哉は声を揃えて答えると、それぞれの持ち場のお店に走っていきました。それを笑顔で見送ったチュー太は、仕込みを始めることにしました。

nezumi_blue_dot.gif仕込みを始めたチュー太は、笑顔で口笛まで吹いていました。でも、それは最初のうちだけでした。チュー太の表情は、なぜか段々曇っていきました。チュー太は、チュー輔のことを思い出したのです。これまでは自分のお店がトラブル続きだったおかげで、お店以外のことを考える余裕がありませんでした。でも、今は利益が安定的に出るようになって、余裕が生まれました。だから、久しぶりにチュー輔のことを思い出したのです。

チュー輔が姿を消してから、もう半年が経ちます。ねずみにとっての半年は、人間で言ったら5年くらいですから、かなり長い年月です。それだけ長い間誰もチュー輔の姿を見ていないということは、もしかしたらチュー輔は、もうこの世にはいないかもしれません。

考えたくはありませんが、チュー太も一瞬そう考えてしまいました。でも、チュー太は気を取り直して、もっとよく考えることにしました。
チュー輔は、自分の意思で店をたたんだ。借金取りに追われて、仕方なく店をたたんだわけじゃない。だから、自殺なんてするわけがない。チュー輔には何か考えがあったからこそ、自分から店をたたんだんだろう。チュー輔なら必ず、その考えを実行していると思う。つまりチュー輔は、絶対に今もどこかにいるはずだ。でも、何かの事情で、帰ってきたくても帰ってこれないのかもしれない。

チュー太は、そう考えました。だからチュー太は、チュー輔を捜そうと思いました。でも、どこを捜せばいいのか、皆目見当がつきません。
そこでチュー太は、自分の2つのお店にチュー輔捜しのポスターを貼ることにしました。そうすれば、たくさんの人の目に触れます。もしかしたら、誰かがチュー輔のことを知っているかもしれません。

チュー太はそう期待していましたが、ポスターを貼って1ヶ月経っても、チュー輔のことを知っているねずみは一匹も現れません。やっぱり待っているだけでは、ダメなのかもしれません。そうは言っても、チュー太には他の方法が思い付きません。だからチュー太は、少し諦め気味になっていました。

nezumi_blue_dot.gif「店長、お客さんが呼んでるんで、<ちょい悪ねずみ>の方に来てもらえますか?」

沈んだ気分で仕込みをしているチュー太のところに、チュー子ちゃんがやってきました。お客さんが呼んでいるということなので、仕込みを中止して<ちょい悪ねずみのためのチーズ屋さん>に行くことにしました。行ってみると、いつだったか<D.D.プレミアム>がまだポイント制のためのプレゼント専用のチーズだった頃に、どうしても売ってくれと頼んできた紳士ねずみがいました。

「やあ店長、お久しぶり」
「こちらこそ、ご無沙汰しております」
「もっと頻繁に寄らせてもらいたいんだけど、私は仕事の都合でたまにしか来られなくて申し訳ないね」
「いえいえ、たまにでも繰り返しご来店いただければ、私どもとしては嬉しい限りです」
「ところで、このポスターのことなんだけどね」
紳士ねずみは、そう言ってチュー輔捜しのポスターを指差しました。

chuta&greenmat.jpg「ひょっとして、チュー輔のことをご存知なんですか?」
チュー太は、驚きと期待で、声が震えてしまいました。

「いや、このねずみのことかどうかは確かじゃないんだけど、もしかしたらと思ったねずみがいるんだよ」
「そのねずみは、どこにいるんですか?」
「隣の国だよ」
「隣の国?」

第13章 売上よりも利益率が重要<後編>へ続く   

チュー太がこれまでに学んだマーケティング・ワンポイント