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06.15.12

第13章 売上よりも利益率が重要<後編>

前回までのお話
チーズの味がわかるねずみのために2店のチーズ屋さんを経営するチュー太。安いというわけではありませんが、「誰のためのどんな魅力」かを明確にしながらお店づくりをしてきたことと、お客さんとのコミュニケーションを大切にした結果、売上を少しずつ伸ばしてきました。
お店は順調でしたが、同じ頃に独立したチュー輔のことが気がかりです。チュー輔のお店は急な店舗拡大のために、従業員の質が落ち、お店の魅力も失われ、チュー輔はお店をたたんで行方不明になってしまったのでした。チュー太はチュー輔を捜すため、自分のお店にポスターを貼ったところ、チュー輔らしいねずみに心当たりがあるというお客さんが現れました。
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第13章<後編>

「そう。私は貿易商をしているんだが、この前隣の国に行った時に、そこでチーズをいくつか買ったんだ。そうしたら、そのチーズの中に、この店のチーズに似た味のものが1つあってね。だから、そのチーズを作った職人ねずみは、きっと店長と同じ店で修行したねずみじゃないかと思ったんだよ。隣の国には、店長と同じ店で修行したねずみなんて、そうそういるもんじゃないだろう?」

紳士ねずみの言う通りです。隣の国とチュー太たちが暮らしている国は、そう簡単には行き来できないのです。なぜならば、2つの国の間には、猫の国があるからです。特殊な技術を持っているねずみじゃないと、危険すぎて隣の国には行けません。だから、紳士ねずみのチーズの味に対する感覚が確かなものだったとしたら、紳士ねずみが言っている職人ねずみがチュー輔である確率はかなり高いと考えられます。

「それ、きっとチュー輔ですっ!」
「私も、その可能性が高いと思う。だからこうして、そちらのお嬢さんに頼んで、わざわざ店長を呼んでもらったんだよ」

そう言って紳士ねずみは、チュー子ちゃんに微笑みかけました。その紳士ねずみの余裕のある笑顔を見て、チュー太は自分が興奮しすぎていることに気づき、落ち着こうと自分に言い聞かせました。

「あのー、チュー輔に連絡を取る方法はありませんか? 是非とも連絡を取りたいんです」
「私が次に隣の国に行く時で良ければ、私が手紙を届けても構わないよ」
「本当ですかっ! ありがとうございますっ! ありがとうございますっ!」
チュー太は何度も何度も頭を下げました。だからチュー子ちゃんも一緒に、何度も何度も頭を下げました。

nezumi_heart.gif紳士ねずみが帰ってからすぐに、チュー太はチュー輔宛の手紙を書き始めました。書きたいことは、山ほどあります。チュー輔が今どうしているのか、自分が今どうしているのか、書きたいことだらけで何を書いていいのか分かりません。チュー太はとにかく、チュー輔に戻ってきてもらいたいと思っていました。でも、よく考えてみると、チュー輔は隣の国で幸せに暮らしているかもしれません。だとしたら、戻ってくるようにと書いたら、チュー輔を困らせるだけでしょう。そう考えると、ますます何を書いていいのか分からなくなってしまいます。

だからチュー太は、出来るだけ短い手紙を書くことにしました。チュー輔が今どうしているのかと、今後どうしようと思っているのかを教えて欲しいという短い手紙です。その手紙を書き終えたチュー太は、手紙と一緒にお礼状とお礼のための<D.D.プレミアム>をチュー子ちゃんに渡して、紳士ねずみの貿易会社に持っていってもらいました。

チュー子ちゃんが戻ってきてチュー太にした説明によると、紳士ねずみが次に隣の国に行くのは、1ヶ月先だということでした。そして、戻ってくるのは、さらに1ヶ月後です。チュー太にとってその2ヶ月間は、ずっと遠い未来のことのような、すぐ先のことのような、そのどちらでもないような気がしました。

なぜならば、紳士ねずみが言っていた職人ねずみは、まだチュー輔だと分かったわけではないからです。もしかしたら、全然違うねずみかもしれません。そうだったとしたら、チュー太の手紙は、見ず知らずのねずみの元に届けられるだけです。そして、チュー輔の消息は、また全く分からない状態になってしまいます。

でも、その職人ねずみがチュー輔だったとしたら、チュー輔が今も元気でやっていることが確認できます。仮にチュー輔が隣の国で幸せに暮らしていて、もうこっちの国には戻ってくる気がないとしても、チュー輔が元気で幸せでいるのなら、チュー太はそれで満足です。
でも、ひょっとしたら、チュー輔はこっちの国に戻って来たいと思っているかもしれません。そして、もしかしたら、チュー太のお店で働いてくれるかもしれません。そうなったら、どんなに幸せなことでしょう。

nezumi_heart.gifチュー太は最近、そろそろ自分一匹だけでチーズ作りをすることに限界を感じ始めています。これまでは勢いで何とかやってきましたが、自分がもし病気で倒れるようなことがあったら、お店を続けることができません。そんなことになったら、お客さんたちに迷惑をかけることは勿論、チュー子ちゃんやチュー哉にも大きな迷惑をかけてしまいます。だから、チュー輔が戻ってきてチュー太のお店で働いてくれれば、全てがうまくいくのです。

ただし、もしチュー輔がこっちの国に戻って来たいと思っているとすると、どうして戻って来ないのかが分かりません。戻って来たいなら、紳士ねずみみたいな貿易商に頼んで、一緒に戻ってくれば良いのです。なぜチュー輔はそうしないのでしょう? それがチュー輔には分かりません。だから、やっぱりチュー輔は戻って来たくないのかもしれないと、チュー太は考えました。それに、そもそもチュー輔じゃないのかもしれないとも思いました。

chuta_jump.jpgこのように、チュー太は来る日も来る日もチュー輔のことを考えていました。ある日は期待に胸を膨らませ、ある日は悲観的になって落ち込んでいました。そんな日々を、チュー太は2ヶ月間も送り続けました。

one_point1.JPGワンポイント・アドバイス

世の中には、売上を伸ばそうとするあまりに、売れば売るほど赤字ということになってしまっている会社もあります。売上がどんなに大きくても、利益につながらないのであれば、無意味です。

逆に、売上があまり大きくなくても、その売上のうちのほとんどが利益という企業もあります。そういう企業は、少人数で効率よく売上を上げているのでしょう。つまり、コストをかけずに効率よく儲けているということです。

そういうビジネスをするためには、商品の単価を出来るだけ高くする必要があります。人口が減れば、たくさん売ることが出来ませんから、少ししか売らなくても利益が出るようにする必要があるのです。しかも、労働人口も減っているわけですから、少人数でたくさん儲かるビジネスが理想的だということです。

だから、人口が減っている国で一番強い企業は、少人数で高額の商品やサービスを提供している企業です。大企業は、海外進出しない限り、どんどん苦しくなっていきます。

少人数で高額の商品やサービスを提供している企業というのは、必ず個性的です。他には無い魅力的な商品やサービスを提供しているからこそ、高額でも買ってくれる人がいるわけです。

そういう企業で働く人は、自分も個性的な魅力を持っている必要があります。なぜならば、個性的な魅力のある企業は、社員にも個性的な魅力を求めるからです。

そして、そういう企業は、社員をとても大切にします。先ほども述べた通り、今後は労働人口が減っていきますから、社員を確保するのが難しくなっていきます。ましてや、自社の社風に合う良い人材を確保するのは、とても難しくなるでしょう。

そのため良い人材は、今よりももっとひっぱりだこになります。そうなったら良い人材は、長時間働かなくても給料がいい企業ばかりに集中することになります。そういう意味でも、利益率の高いビジネスをする必要があるのです。

そして、良い人材ばかりが集中すれば、自然に利益率は高くなります。逆の企業は、社員数ばかりが多くて、人件費が重くなって利益が全然出ないということになるでしょう。勿論、そういう企業の社員の給料は、安くなってしまいます。利益が少ないのに、社員ばかりがたくさんいるのですから、そうなってしまうのが当然です。


第14章 いいモノといいコト<前編>へ続く  
※2012年6月19日(火)公開!

チュー太がこれまでに学んだマーケティングのポイント!