TOP > 高橋朗のマーケティング小説「チュー太はどのようにチーズ屋さんを成功させたのか」 > 第17章 経営には財務の知識が不可欠である<後編>



07.13.12

第17章 経営には財務の知識が不可欠である<後編>

前回までのお話
2店舗のチーズ屋さんを経営するチュー太は周りのアドバイスなどからマーケティングのヒントを得ながら、お店の売上を伸ばしてきました。チーズ作りを1匹でおこなうことが不安になり、以前同じ親方のお店で修行したチュー輔を雇いました。しかし作る量は2倍に増えましたが、すべてを売りさばくことができません。在庫が発生し、固定費を上げてしまいます。そんなチュー太に財務を勉強したチュー輔は、損益計算書の話をします。売上と利益の状態を把握しておこうと、早速損益計算書を作成することに決めます。
第1章からご覧になる方はこちら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第17章<後編>

「それから、損益計算書を作るのは、もう一つ重要な意味があるんだ」
「重要な意味?」

「そう。チュー太の2つの店は、どちらも小さいなりに、確実に利益を出しているだろう? それに、無駄な費用も使っていないよな?」
「うん」
「だから、かなり見栄えのする損益計算書が作れるはずだ。それを銀行に見せて、お金を借りよう」
「え? そんなことで、お金が借りられるの?」

「借りられるよ。損益計算書を作ってみないと、いくらくらい借りられそうかは、分からないけどな。損益計算書から過去の実績を見て、確実に返済できる金額までなら、銀行は融資してくれる」
「じゃあ、増築できるってこと?」
「多分な」

チュー輔は、これが言いたくて、損益計算書の話を始めたのです。チュー太も、やっとそれに気づきました。
「ついでに言っておくと、融資を受けるようになったら、バランスシートってものも作る必要がある」
「それは、さっきのと何が違うの?」

「損益計算書の方は、今説明した通り、ある期間の利益や損失を見るためのものだ。バランスシートの方は、ある瞬間における企業の資産と負債のバランスを見るためのものなんだ」
「ふうん」

「今はまだ必要ないから詳しくは説明しないけど、資産と負債がどういうバランスになっているのかは、重要な経営指標だろう? だから普通は、損益計算書とバランスシートは、一つのセットとして同時に作られるものなんだよ」
「そうなんだ」

「うん。だから、銀行から融資を受けたら、必ずバランスシートも作る必要がある。それに、将来的に株式を発行するためにも、損益計算書とバランスシートは必要だな」
「株式なんて発行しなくてもいいよ。僕は、そんなに手広くやろうと思ってないから」
「チュー太、株式を発行するのは、自分が儲けるためだけじゃないのさ」
「どういうこと?」

「会社を経営する以上、ちゃんと利益を出して、税金を納める責任がある。そのために、損益計算書やバランスシートが大切なんだ」
「それは分かるけど、それと株式と、どういう関係があるの?」

「株式も同じことだよ。みんなに株を買ってもらうとするだろう? それで、ビジネスがうまくいけば、株価が上がる。そうすれば、株を買ってくれた人たちも、儲かるじゃないか」
「なるほど」

「世の中には、例えば歳を取ったりして、自分で働きたくても働けないねずみもいるだろう? そういうねずみたちに株を買ってもらって、それで株価が上がるようにがんばれば、寄付をしたのと同じことになるよな? 投資をしてもらうっていうのは、そういうことだよ。それに、銀行から融資してもらった場合は、決まった利息を返すだけだけど、投資してもらった場合は、2倍にも3倍にもして返すことができるかもしれないんだ」
「そうか! そういうことか!」

chuta&cheese152_125.jpgこの時はじめて、チュー太は株式を発行したいと思いました。チュー太はこれまで、直接お店に買いに来てくれるお客さんのためだけに働いていれば充分だと思っていました。でも、やり方によっては、もっともっと大勢のねずみたちのために働くことができることに気づいたのです。そして、そうした方が自分自身も、もっともっと嬉しいことに気づいたのです。

one_point1.JPGワンポイント・アドバイス

会社は社会の公器です。だから、きちんと利益を出して、税金を納める責任があります。利益を出すことは、自分たちが儲けることだけが目的ではありません。利益を出すことは、社会全体のためでもあるのです。

例えば、日本の企業がみんな赤字だったら、税金が不足して、日本全体が滅茶苦茶になってしまうでしょう。それは、景気が悪くなるというレベルではなく、国家が崩壊することを意味しています。

だから経営者は、何が何でも利益を出す必要があるのです。どんぶり勘定の経営をしているようでは、経営者失格です。経営をするためには、基本的な財務の知識が必要なのです。最低でも、損益計算書とバランスシートが読める必要があるでしょう。

また、そうでなければ、銀行とうまく付き合うことができません。事業を拡大していくためには、必ず銀行と付き合う必要があります。事業を拡大する際は、売上が増える前に、資金が必要となります。だから、銀行に融資してもらう必要があるわけです。それから、普通に事業を継続している時でも、売上が立つ前に、材料を仕入れたり設備を新しくしたりするための資金が必要になります。そういう時にも、銀行から融資してもらう必要があります。

このように、企業が事業を拡大したり継続したりできるように適正な融資をすることが、本来の銀行の役割であるとも言えます。そして、それを間接金融と言います。

それに対して、投資家に株式を買ってもらうことで資金を集めることを、直接金融と言います。株式市場というマーケットから直接資金を集めるから、直接金融と言うわけです。

ここ数年は、直接金融で不正に儲けを出そうとする経営者の事件が続きました。そういう経営者は、言うまでもなく言語道断です。直接金融は、広く誰にでも開かれた条件で公正な取引を行うことで、社会全体に利益を配分することが大前提です。だから、仮に不正を行わなくても、自分だけが儲かればいいと思っている時点で、経営者失格なのです。

経営には、財務の知識が必要です。でも、その知識は、マネーゲームをするために必要なわけではありません。正しい経営をして、きちんと利益を出して、社会に貢献することための知識なのです。

チュー太がこれまでに学んだマーケティングのポイント
 

第18章 みんなのことを大切に思う<前編>へ続く
※2012年7月17日公開!


いよいよ最終章に入ります。最終章は本当に大切なことは何か、成功するために一番大切なことについての文章になります。