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07.20.12

第18章(最終章) みんなのことを大切に思う<後編>

前回までのお話
そこはお葬式の会場でした。ねずみのチュー太のお葬式です。チュー太はチーズの味がわかる健康志向のねずみのためにチーズ作りをし、その方針を守りながら売上をどんどん伸ばしていきました。会社が大きくなっても役員たちの給料はできるだけおさえ、多くの従業員を雇い入れ、多くのねずみの生活を豊かにしたいと考えていました。さらに恵まれないねずみのためのボランティア団体を立ち上げたり、多くのねずみから尊敬される存在となっていたのです。しかし7歳という早い生涯を終えたのでした。  第1章からご覧になる方はこちら

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第18章<後編> 最終回

そこにいるメスねずみはみんな、オスねずみの多くも泣いています。

でも、一匹だけ毅然としている老メスねずみがいます。その老メスねずみが、チュー輔に替わって祭壇の前に立ちました。それは、この葬儀の喪主を務めるチュー太の奥さん、おチューさんです。

「本日はチュー太のために、こんなにたくさんの方々にご参列いただきまして、誠にありがとうございます」

おチューさんは、深々と頭を下げました。最初に真正面に向かって、次に右側に向かって、そして最後に左側に向かって頭を下げました。その間にみんなの泣き声が静まって、葬儀会場はしーんとなりました。

「チュー太は、本当に幸せなねずみでした。チュー太ほどたくさんの方々に愛されたねずみは、きっと一匹もいないでしょう。それは、今日、この場にいらっしゃるたくさんの方々が証明してくれています。

だから私も、本当に幸せなねずみです。こんなにたくさんの方々に愛されたチュー太に愛された私は、世界一の幸せ者でしょう。皆さんは私に、お悔やみのお言葉をくださいます。また、ご心配してくださる方々もたくさんいらっしゃいます。でも、私は幸せですから、どうかご心配なさらないでください。

皆さんには、私のことなどではなく、他にご心配すべき方々がいるはずです。まず、ご家族のことを、もっともっと考えてあげてください。お父さんのこと、お母さんのこと、そして子供たちのことを、もっともっと大切にしてあげてください。それから、お友達のこと、仕事のお仲間の方々のことも、もっともっと大切にしてあげてください。そして、社会全体のこと、世界全体のことも、もっともっと大切にしてあげてください。

それがチュー太の願いです。チュー太は、私のことも、私たちの子供たちのことも、会社の従業員の皆さんのことも、お客様のことも、お客様のご家族のことも、そのご家族のお知り合いの方々のことも、みんなみんな大切に考えていました。そして、みんなもみんなのことを大切に考えてくれる日が来ると信じていました。

そして私も、チュー太と同じ気持ちです。きっと私と同じ気持ちの方々も、たくさんいらっしゃることでしょう。だからチュー太の願いは、これからも生き続けます。きっと永遠に生き続けることでしょう。本日は、本当にありがとうございました。ありがとうございました」

そう言って、おチューさんは再度みんなに向かって頭を下げました。すると、今度はすすり泣きと共に、あちこちから拍手が湧き起こりました。拍手の音はどんどん大きくなって、割れんばかりになりました。

そして、どこからか「チュー太バンザーイ!」という大きな声が上がりました。すると、その声に応えて、何匹かのねずみが同じように「チュー太バンザーイ!」と叫びました。その叫び声は次第に大きくなって、遂にはそこにいる全員による「チュー太バンザーイ!」の連呼が始まりました。

その連呼の中を、チュー太の遺体を収めた棺が、厳かに進んでいきます。棺は正装したオスねずみたちに支えられ、みんなの間をゆっくりと進んでいます。ゆっくりゆっくりと、会場の出口に近づいていきます。

そして、出口の扉が開けられました。チュー太の棺が、会場の外に出て行きます。会場の外にも、参列者たちがたくさんいます。そのねずみたちも、「チュー太バンザーイ!」と叫んでいます。チュー太の棺は、その中をゆっくりと進んでいきます。ゆっくりとですが、確実にみんなの輪の外に向かって進んでいます。

chuta&cheese152_125.jpgチュー太の棺が、みんなの輪の外に出ました。それでもみんな、「チュー太バンザーイ!」と叫び続けています。チュー太の棺を運ぶねずみたちの姿は、少しずつ小さくなっていきます。それでも、「チュー太バンザーイ!」の叫び声は小さくなりません。「チュー太バンザーイ!」の叫び声は、ずっとずっと続きました。

one_point1.JPGワンポイント・アドバイス

どんな仕事も、絶対に一人では出来ません。仕事はお客さんがいなければ成立しませんし、仕事には必ず仲間が必要です。だから、お客さんや仕事仲間のことを、大切にしなければなりません。

そして、お客さんや仕事仲間には、家族がいます。お客さんも仕事仲間も、家族によって支えられています。だから、お客さんや仕事仲間の家族の方々のことも、大切にしなければなりません。

しかも、その家族の方々も、他の人たちに支えられているのです。だから、社会全体のことを大切にしなければならないのです。

また、私たち自身も、自分の家族に支えられて生きています。だから、自分の家族のことも、大切にしなければなりません。

私たちは、ありとあらゆる人たちのことを、大切に考える必要があるのです。

グローバル経済になって、世界中がつながるようになりました。特に日本は、エネルギーも食糧も輸入に頼っています。だから、エネルギーの輸出国の人たち、食料の輸出国の人たちのことを、大切に考えなければなりません。それに日本は、家電品や自動車などの工業製品を輸出することで稼いでいます。だから、それらの工業製品を輸入してくれている国々の人たちのことも、大切に考えなければならないのです。

自分のことだけ考えていても、生きてはいけます。でも、そういう人のことを好きになる人はいません。そういう人と仲間になりたいと思う人もいません。だから、自分のことしか考えていない人は、プライベートもビジネスも、うまくいかないでしょう。自分のことしか考えないと、全てがうまくいかないのです。

逆に、みんなのことを大切に考えている人は、全てのことがうまくいきます。世の中は、そういうふうに出来ているのです。

チュー太が学んだマーケティングのワンポイントはこちら

最後に・・・
今回で「チュー太はどのようにチーズ屋さんを成功させたのか」の物語は終わりました。これまで読んでいただいた皆様、誠にありがとうございました。18章の中でそれぞれ大切なポイントが語られてきました。知っていることも多かったと思います。しかし、仕事が忙しすぎて、その基本すら忘れてしまうこともあります。ときどきマーケティングに大切なことって何だっけ?と思いだしていただければ幸いです。何よりも大切なことは、自分が周りに支えられていることを忘れずに、みんなのことを大切に思う、それぞれの人が喜んでくれることは何だろうと、常に思うことが大切だと思います。